未婚率の上昇が続き、人口減に転じた日本。少子化対策で婚活サポートに乗り出す地方自治体も増えていますが、すべての自治体でうまくいっているわけではありません。自治体による婚活サポート、成功のカギとは?
広まる地方自治体による婚活サポート。予算かける意味を問う声も
自治体や商工会議所による街コンの開催、自治体ごとの婚活マッチングサイトの運営、結婚したい若者のお世話をする地元の有志を集める婚活サポーター制度など、若者の婚活を支援するため、さまざまな取り組みが地方自治体で企画・実施されるようになってきています。
都道府県レベルで婚活サポートに乗り出している自治体は31団体(66.0%)(2010年内閣府「結婚・家族形成に関する調査」より)。地方での婚活サポートに対しては、2015年度の補正予算と2016年度の当初予算として30億円が「地域少子化対策重点推進交付金」として割り当てられました。
けれど、自治体が主導する婚活サポートには、「効果があるのか」と厳しい目を向ける動きもあるようです。2015年11月12日に開かれた行政事業レビューでは、「市役所が本当に街コンとか婚活、やる必要があるんですか。民間あるじゃないですか」という疑問が投げ掛けられたようです。
自治体による婚活サポート、成功を左右するカギとは
税金を使って実施するからには、しっかりと成果を出さなければいけない――。生活者の目から見れば当たり前のことではありますが、とはいえ、婚活支援のプロではない自治体の担当者としては「明日からお前、婚活サポートを担当しろ」と言われても、そう簡単に成果を出せるものではありません。
一体どうすれば、地方自治体の婚活サポートが成果につながり、「実施する価値がある」と評価されるようになるのでしょうか。
大手婚活サービス会社のIBJ が20以上の自治体から「サポーター育成研修」「婚活ガイダンス冊子作成」「独身者向けセミナー」などを任されてきた経験を踏まえて分析したところによると、自治体による婚活サポートが成功するかどうかは、
1)独身者の意欲喚起
2)婚活サポートの標準化
がカギになるそうです。
「独身者の意欲喚起」、「婚活サポートの標準化」とはどんな意味なのかと考えてみると、独身男女に「少子化を食い止めるために結婚しようよ」と自治体の都合だけを一方的に押し付けるのではなく、結婚することの魅力を独身男女にアピールしていくことで、彼/彼女たち自身に「結婚したい」と思ってもらえるように努めること。
そして街コンの開催、婚活マッチングサイトの提供、婚活サポーター制度の運用といった取り組みをするにしても、各自治体が自分たちでゼロから運営手法などをつくりあげようとするのは非効率的です。すでに成果を出している手法を採り入れて関係者の間で標準化し、婚活サポートの業務を滞りなく進められるようにすることが必要になってくるのでしょう。
開発に数千万円規模が必要な婚活サポートシステム、IBJが1年無償で提供
先に挙げた「婚活サポートの標準化」を推し進めていく後押しとするために、IBJは2016年6月から、自治体向けに婚活サポートシステムを1年間無償で提供すると発表しました。
IBJの婚活サポートシステムは、全国の結婚相談所1200社と婚活中の独身男女5万7000人が利用し、このシステムから年間約4500人が成婚しているそうです。
民間の婚活サービス会社最大手が開発し、実際に使い込みながら改善を重ねてきたシステムです。婚活中の利用者へのお相手のご紹介、会いたいか会いたくないかの返答確認、お見合い日程の調整、お見合い後の交際を希望するかの意思確認といった機能を一通りそろえています。
独身男女の仲を取り持つ婚活サポーターがスムーズに対応できるようになり、「うっかり、対応を忘れていた」といったミスも防げるようになるでしょう。婚活中の利用者が使うシステムも使いやすくなっていますから、「このシステム、使いづらいから婚活が面倒くさくなってきた」と婚活意欲を失わせるような事態も減らせるはずです。
こうした婚活サポート用のシステムを開発するのにかかる費用は、一般的に数千万円規模と非常に大きなものになってしまいます。IBJの婚活サポートシステムも、これまでは利用開始時に300万円の利用料金が必要でした。それが今回、自治体向けに1年間無料で提供することに。
システム運用のアドバイスやサポートスタッフの研修、成婚率/成婚数を上げるためのノウハウを伝えるセミナー・研修もオプションで提供していく計画だそうです。
「地元の若者のために、婚活サポートを始めようか」「少し前から始めた婚活サポート、成果が上がらないがどうすればいいだろう」といった課題に直面している自治体には、見逃せないニュースと言えるのではないでしょうか。