法律婚と事実婚、法的な違いとは?
この記事では、法律婚と事実婚の違い、メリット/デメリットなどを見ていきたいと思います。
一般的に「結婚をする」と言うと、婚姻届を出して「夫」「妻」になるというイメージです。これは法律婚(届出婚)と呼ばれています。
しかし近年、事実婚を選択する人も増えてきました。法律婚と事実婚は、どのような点が違うのでしょうか。
事実婚とは、当事者同士の意思により、婚姻届は出さないけれど社会的には法律婚の夫婦と同様の状態にあることを指します。普通の同棲から、一歩踏み込んだ関係と言えるでしょう。
法律婚の場合、2人がそれぞれ今までの親の戸籍から抜けて、2人だけで新しい戸籍を作ります。このとき、どちらかの姓を選ばなければなりません。また、多くは夫が世帯主になり、住民票を取るとき、妻の「世帯主との続柄」欄には「妻」と記載されます。
一方、事実婚の場合、戸籍の移動はせず、姓も変わりません。そして世帯主との続柄は、「妻(未届)」や「夫(未届)」、あるいは「同居人」という記載になります。
こうすることで世帯が同一になり、さらに「結婚の意思」がある事実婚であるとして、同棲から区別されるようになります。
このように事実婚として住民票の続柄記載を変えておくことで、社会的な手続きが必要な場合などに、法律婚と同じ扱いをしてもらえるようになってくるのです。
事実婚のメリットとは? 法律婚と同じところも多い
事実婚を選択する理由として、「アイデンティティを保てる」「相手の家に“婿”や“嫁”という見方をされない」「対等なパートナーシップを築きやすい」といった精神的な要因が挙げられています。
さらに、姓が変わることによる不利益を回避できるのも大きいです。改姓すると仕事関係者や友人・知人への連絡が大変ですし、事務手続きは非常に面倒です。法律婚をした上で職場などでは旧姓を使う「夫婦別姓」には限界があるので、事実婚は主に女性にとってメリットが大きいと言えます。
また、多くの点で、事実婚でも法律婚とほぼ同じメリットがあります。
まず扶養が可能になり、遺族年金などの受取人にもなれます。そして法律婚に比べて難しい面もありますが、場合によっては勤務先から家族手当を受けたり、生命保険の受取人や住宅ローンの連帯保証人になったり、クレジットカードや携帯電話、自動車保険などの家族割引を適用することもできます。
これらは勤務先や保険会社などの裁量によって可否が決まります。今後は事実婚に理解を示す企業が増えてくるでしょうから、法律婚と同じ扱いをされるケースが増えるのではないかと考えられます。
さらに、事実婚を解消するときの財産分与や慰謝料請求、年金分割なども可能です。ただ、どちらかが亡くなったとき、もう一方には相続権がありません。それも遺言を残すことで、財産を残せるようにもなります。
事実婚のデメリットは?
一方、法律婚と比べて、事実婚にはいくつかのデメリットもあります。
まず経済的な面では、税金の配偶者控除が受けられません。ただし共働きであれば、もともと配偶者控除の適用は受けられないでしょうから、この点は問題にならないでしょう。
その他にも、「医療費控除の夫婦合算ができない」「厚生年金で配偶者の扱いが受けられない」「不妊助成が受けられない」といったデメリットがあります。
また子どもができたとき、事実婚の場合、基本的に子どもは母親の姓となります。これは、法律婚で父親の姓となることが大半の日本では、子どもにとっての精神的負担などになる恐れがあります。ただし、家庭裁判所の判断次第で、子どもを父親の戸籍に入れて父親の姓にすることも可能です。
また、父親が子どもを認知しても、戸籍上は「非嫡出子」となります。世間には冷たい視線を向けてくる人もいるかもしれませんが、少しずつ事実婚への理解も広がっていくでしょう。嫡出子と非嫡出子が相続において平等になるなど、法律も改正されつつあります。徐々にこうした問題は、無視できるようになっていくかもしれません。
しかし、まだ問題はあります。事実婚の場合、夫婦のどちらかしか、子どもの親権を持てない(共同親権が持てない)のです。
例えばフランスでは、法律婚であれ事実婚であれ、さらに離婚後であれ、共同親権が認められています。一方、日本では、事実婚や離婚後は単独親権となるのです。
親権を持たなかった親にとってはデメリットが大きく、軽視できない問題になるかもしれません。もし子どもが重病や事故などで入院することになったとき、親権を持たなかった親には手術に承諾するサインができませんし、入院した子どもの病状説明を断られるケースが出てくるからです。実際に直面すると、大きな問題になるでしょう。
このように、事実婚にはいくつかのデメリットはありますが、努力によって解決できそうなものや、今後社会が変わっていくことで解決されそうなものが多々あります。
「精神的に自由でいたい」「自分がこれまで生きてきた姓でいたい」といった理由から、今後はもっと事実婚を選ぶカップルが増えていくのではないでしょうか。多様なライフスタイルが可能になりつつある今、結婚前の皆さんは事実婚という選択肢も考慮しつつ、自分らしい選択は何かと1度考えてみてはいかがでしょうか。
image by:Elizabeth Tate With Nancy Ray,Ardita Kola