「東日本大震災がきっかけとなり、1人でいることに不安を覚えて婚活を始める人が増えた」とも言われていました。
婚活情報メディアに結婚体験談を寄せてくれた木村さん(仮)も、震災後に優しくしてくれた男性に惹かれて結婚を決意することになったそうです。
専門学校で同じクラスでも、接点はほとんどなし
木村さんが今の旦那さん、吉田さん(仮)と出会ったのは、2人が18歳の時。吉田さんと木村さんは高校卒業後に入学した専門学校で同じクラスでした。
吉田さんは特に目的があってその学校に入学したわけではなく、何となく選んだだけ。そのため勉強にさほど熱心ではなく、遅刻や欠席が多くてレポートの提出が遅れることもありました。
一方、真面目な性格の木村さんは、授業にもきちんと出席して勉強に励んでいました。
そのようにタイプが違う2人なので、専門学校在籍中はあまり接点がなく、顔見知りという程度の関係。吉田さんはすらっと背が高くて、しかもイケメン。「ルックスに似合わず、なまりのある言葉遣いがかわいい」と女子学生の間では人気で、「彼女がいる」と木村さんは聞いていました。
そして木村さんにも、高校時代から付き合っている彼氏がいました。その彼は遠くの大学に入学したため、遠距離恋愛を続けていたのです。
卒業の翌日に起きた東日本大震災
専門学校にいた間、吉田さんと木村さんが2人で会ったのは2年間で1度だけでした。
試験前に吉田さんが「授業のノートを見せてほしい」と木村さんに頼み、そのお礼をしたのです。ノートを返す時、吉田さんは「お礼におごるから」と学校近くのラーメン屋に木村さんを誘ってくれました。
吉田さんの気取らない人柄に「思っていたよりも、いい人だな」と感じたという木村さん。けれど、その時にはもう卒業が間近に迫っていました。2人とも就職先は決まり、春からはそれぞれ社会人としての一歩を踏み出すことになっていました。
そして無事に卒業式を終えた翌日のこと。誰も予期していなかった出来事がありました。東日本大震災です。
幸い、木村さんも吉田さんも直接大きな被害はありませんでした。けれども木村さんは大きな地震に驚き、津波の映像をニュースで観たときには言葉を失いました。
震災直後は携帯もつながらず、一人暮らしの木村さんはとても心細い思いをしました。実家とは間もなく連絡が取れて両親の声を聞いて安心したのですが、彼氏からはまったく連絡がなかったのです。
実は、彼氏とは少し前から疎遠になり始めていました。連絡は途絶えがちでクリスマスも別々に過ごすことに。正月に帰省したタイミングで1度会っただけでした。
木村さんが震災直後に送ったメールに、ようやく彼氏から返事があったのは5日後のこと。それも短くて事務的な内容。もうお互いの心が離れてしまったことを実感し、「これだけ心細くなっているときに支えてくれない人とは別れよう」と木村さんは決意したのでした。
「今でもプーさん好きですか?」
震災からしばらくたったころ、木村さんの携帯電話に何の前触れもなく吉田さんからメールが届きました。
「アドレス変更しました」という内容でしたが、最後に「今でもプーさん好きですか?」の一言が。木村さんは特にクマのプーさんが好きなわけではないので、「誰かと勘違いしているのかな」と思い、返信を送ってみました。卒業後、初めての連絡です。
震災後、すっかり気弱になっていた木村さんにとって、たとえアドレス変更のメールでも、連絡をもらえたことがうれしかったのです。心当たりはなくても、吉田さんが「今でもプーさん好きですか?」と一言添えてくれたことも気になりました。
「誰かと勘違いしてない?」という木村さんからのメールに対して、吉田さんは「試験前に借りたノートがプーさんの柄だった」と返してくれました。
そのノートは、友人からのプレゼントでたまたま使っていたことを思い出した木村さん。自分でもすっかり忘れていたノートのことを覚えていてくれたことに驚き、「この人は細やかなことまで気に留めてくれる人なんだな」と吉田さんに好印象を持つようになりました。
このメールをきっかけに、2人は急速に親しくなっていきました。木村さんは遠距離恋愛していた彼氏とは完全に別れ、吉田さんもしばらく前から彼女なし。1カ月もしないうちに「付き合おうか」という話になりました。
付き合い始めてみると、不思議なくらい気が合いました。2人でいるとお互い無理をせずに過ごせ、とても居心地がよかったのです。
交際が始まって1年後には結婚、3年後には子供を授かり、今も明るく笑い声の絶えない家庭を築いています。