ハーバード大学で、75年にわたって続けられてきた「Grant Study」という研究があります。研究対象はハーバード大学を卒業した268人の男性。IQ・飲酒癖・家族との関係などが、仕事・結婚・離婚・老後の人生などとどのように結び付いたのか、相関関係を追跡調査したものです。
その研究を40年以上指揮してきたのが、ジョージ・バイヤン博士です。2009年にThe Atlantic誌が詳しく取り上げています。
その中で、バイヤン博士は1つの非常にシンプルな結論を導き出しました。「幸福とは愛情です。それ以上でも以下でもありません」
英文ではたった5つの単語で言い表せてしまうのです。「Happiness is love. Full stop」と。
アルコール中毒は離婚の主原因に
それではGrant Studyの研究成果はどんなものか、具体的に見ていきましょう。バイヤン博士は老年における幸福・健康・温かな人間関係は強い相関関係があると主張しました。
まずバイヤン博士は、“アルコール中毒がもたらす破壊性”に言及しています。アルコール中毒は離婚の主たる原因になり、うつやノイローゼをもたらしました。また喫煙との因果関係もあるとみられ、若年での罹患や死亡の一大原因となっていました。
IQに関していえば、IQが110~115の人と150以上の人とでは収入の観点からは大きな違いは見られませんでした。ある一定レベル以上であれば、知能はさして重要なものではないといえます。
性生活にも触れています。保守的な男性は平均68歳で性生活にピリオドを打ちますが、最もリベラルな男性は80代になっても積極的な性生活を保つという結果が出ました。
The Atlantic誌にバイヤン博士の調査報告が掲載されると、批評家から相関関係について疑問が投げ掛けられました。しかし、バイヤン博士は疑問をはね返すだけのデータを示し、人生において人間関係が重要であると反論したのでした。
母親からの愛情こそ、成長してからの年収増などにつながる
この調査で重要なキーとなってくるのは、「母親との温かい関係性は、大人期になっても長期にわたり重要である」ということです。
・幼年期に母親から温かい愛情を受けていた男性は、そうでない男性に比べ、年収が8万7000ドル(約1070万円)多い
・幼年期に愛情を十分に受けてこなかった男性は、大人になってから痴呆を発症する可能性が高い
・少年期における母親との関係性は、ビジネスマンとしての仕事の効率性にも関係する
そう、75年を費やした研究結果から導き出されたものは、「幸福は愛情」という至ってシンプルなものだったのです。
image by:Nina & B