裁判で問われた夫婦同姓の是非
2015年12月、日本の“常識”になっている夫婦同姓に異議を唱えた裁判に対して、最高裁が最終判断を下しました。
夫婦の別性を認めない民法の規定が違憲か合憲かを問題にした裁判でしたが、「夫婦同姓の制度は我が国の社会に定着してきたもので、家族の呼称として意義があり、その呼称を一つにするのは合理性がある」などの理由で「合憲である」という判断でした。
今回の判決で合憲とされた理由として、「同じ姓を称することで家族の一員であることを実感できるという意義」が挙げられています。
「姓=家族の呼称」であることを重視し、同じ姓を名乗ることで家族への帰属を意識できることの意義が強調されたわけです。日本のいわゆる「家制度」の考え方に根差した家族観を、大きく反映した結果といえるでしょう。
夫婦同姓、実は日本古来の文化ではない
この判断に対して、「夫婦同姓は昔からあるものだから、大事にした方がいい」と考える人もいるかもしれません。
ところが、家制度やそれに基づく夫婦同姓は、日本古来の文化かといえば実はそうでもないのです。現在の民法は明治中期に定められたもので、それより以前には「姓」の考え方や用いられ方が時代によってさまざまに変化してきました。
例えば平安時代では、現在の姓に当たるものには「氏(うじ)」「氏名(うじな」「姓(かばね)」があり、時代や地域により夫婦同氏であったり別氏であったりしたようです。もっと言うと、江戸時代になると、庶民には公に姓を名乗ることが認められていませんでした。
明治初期になり、実はいったん、夫婦別性が制定されることになりました。しかしその後、明治中期に現在の夫婦同姓が定められたのです。
このように日本でも、姓に関する考え方や制度は紆余曲折しています。明治中期に定められた現在の制度も、「文化的背景というより合理的・効率的に戸籍を管理するために夫婦同姓とした」とも言われているのです。
世界的には特異な日本の夫婦同姓制度
このような背景を持つ日本の夫婦同姓制度ですが、グローバルな視点で見るとかなり異質な制度になっているようです。
国連が1979年に採択して日本も批准している「女子差別撤廃条約」では、「選択的夫婦別氏制度」が認められています。日本はそれに違反するとして、国連から2度にわたって改善勧告を受けているのです。
また、世界各国の状況を見ても、先進国では同姓・別性を選択できる国がほとんど。夫婦別性を原則としている国はありますが、同姓を強制している国は極めてまれです。
このように日本の家制度に基づいた夫婦同姓の強制は、グローバルな感覚からいえば“非常識”なものと言えるでしょう。最高裁では認められませんでしたが、現代では夫婦同姓と別性が選択できる選択式が合理的と言えるのではないでしょうか。
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